パリ・オペラ座バレエ団 『ジゼル』 ジルベール&エイマン 2010年3月19日

昨日の熟練ペアに対して、本当にフレッシュな2人による全く別の舞台だった。

ドロテ・ジルベールのジゼルは一幕の村娘は彼女の明るいキャラクターが村娘にぴったり。やや元気すぎて心臓が悪そうには見えないかな。狂乱の場面ではアニエスと違い、一気に侠気の世界へ行ってしまい、激しい狂乱だった。テクニック的には本当に軽やかで申し分なく、2幕のウィリとなってからは、体重を感じさせない踊りは素晴らしかった。ただ、上半身のラインがジゼルっぽくない気がしてやや気になった。

エイマン君は本当に素晴らしかった!まず、ちょっと気品が出た!以前エトワール・ガラでマチューの代役としてルンキナのジゼルの相手役を勤めた時は、もう全然お小姓ぐらいにしか見えなくって、ルンキナのジゼルが素晴らしかっただけにそのギャップが大きかく、王子は無理・・・と思ったが、今回はちゃんと育ちの良い貴族の風格が出ていた!もちろんマルティネスのような高貴さはまだまだだけど・・・とにかく、その成長にまず目を見張った。踊りはさらに素晴らしく、跳躍がいちいち高い。彼が跳ぶたびに客席が息を呑むのが分かるようだった。2幕の最後のアントルシャ・シスは一体何回跳んだのだろう・・・数え切れないほど連続。こんなの初めて観た!

マイムなどは本人たちの解釈によってある程度自由に演じることが許されているのだなぁと連続して観てしみじみと思った。花占いでは一つの花を持って、あきらめたジゼルにアルブレヒトはその花の花びらを一枚とって、大丈夫だよ!とする従来パターン。昨日は二つの花で、二つ目だったら大丈夫!だった。

アルブレヒトがバチルド姫に会った時は、エイマンは手にキスではなく、額に手を当てて敬意を表しているよう。

2幕のアルブレヒトの登場のシーンでは、ジョゼはマントを腕にとても美しいドレープを作ってかけていたが、エイマンはそこにはこだわらず、マントをすっぽり首にまきつけていた。そして、ミルタに踊らされた時、エイマンはアントルシャ・シスをひたすら連続し、最後は本当に力尽きたようにばったり倒れた。これはかなり真実味があって良かったかも。

ジゼルが墓に消えてしまった後のエンディング。エイマンは百合の花を拾って、ぽとりぽとり・・・マルティネスは小さなお花だったと思う。これってそう言えばヒラリオンが置いていった花束だったなぁなんて。

ドロテとマチアスの息はぴったりと合っていて、とても情熱的な舞台だった。オペラ座次世代の黄金ペアになるのだろうな。

エミリー・コゼットのミルタは最初のパ・ド・ブレがやはり素晴らしかったのだが、それ以外はあまり印象に残らなかった。今日は2階席だったせいか、やはり2幕が暗くて観辛く、ドゥ・ウィリもほとんどまったく判別できなかった。

パリ・オペラ座バレエ団 「ジゼル」(全2幕)
2010年3月19日 19:00〜 東京文化会館

◆主な配役◆
ジゼル:ドロテ・ジルベール
アルブレヒト:マチアス・エイマン
ヒラリオン:ニコラ・ポール

ウィルフリード:ジャン=クリストフ・ゲリ
ベルタ、ジゼルの母:カリーヌ・ヴィラグラッサ
クールランド大公:ヤン・サイズ
バチルド姫:ベアトリス・マルテル

ペザント・パ・ド・ドゥ:リュドミラ・パリエロ、アレッシオ・カルボネ

ミルタ:エミリー・コゼット
ドゥ・ウィリ:マチルド・フルステー、シャリーヌ・ジザンダネ

演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:コーエン・ケッセル