ルジマトフ 『バレエの真髄』 2010年7月8日

文京シビックホール

昨年のミハイロフスキー公演の時にルジマトフのシェヘラザード全幕と聞いて、これは見ておかねばと早々と取ったチケット。前方の席でなかなかとおもったら、このホール、前列の段差がほとんどないし、席のずれ方もかなり微妙!で、辛うじて傾斜の始まってる席だったが、舞台センターで踊られるとほとんど見えないという最悪な席だった。このホールなら10番台半ば〜20番ぐらいでないと足元が見えないだろう!!

ルジ様の濃ゆ〜いナルシストっぷりは健在。ファン垂涎ってやつでしょうか。ファンの皆様の熱気に圧倒された・・・ 私の救いは都さんとフィリピエワかな。もちろん、ルジマトフはやはり美しかったのだが・・・思い入れの温度差をひしひしと感じた会場だった・・・

第1部 

「眠りの森の美女」よりローズ・アダージョ
 ナタリヤ・ドムラチョワ
 セルギイ・シドルスキー/イーゴリ・ブリチョフ/ オクレシイ・コワレンコ/チムール・アスケーロフ

王子が次々と出てきて、「あ、そうだローズ・アダージョなんだ」とちょっとびっくり。ガラでローズ・アダージョは珍しい。シェヘラザード全幕のためにキエフのダンサー達を連れてきてるのだから、少しでも舞台に立たせてあげようという企画なのだろうか。ドムラチョワのオーロラはかわいらしく、テクニックも安定していて及第点。驚嘆したり感激したりすることはなかった。バランスを取りながら4人の王子がつぎつぎと手をバトンするところは、コジョカルのオーロラが一番好き。王子一人一人の目を見て、にっこりしながら手を変えるのだ。後、タマラ・ロホならまったく王子の手を必要としないだろうな。とかそんなことを思って観てしまった。重度なロイヤル後遺症・・・


 岩田守弘
 振付:M.ラブロフスキー

う・・・・ん。つまんないな〜と思ったら、ラブロフスキーが振付だったのか・・・道理で・・・ 恐らくテーマがテーマだけに、岩田さんもアイディアを出されたのだろうけど。外国で踊ったら受けるかもしれないけど、日本だと・・・ 岩田さんの個性が生かされた振付でもなかった。

「海賊」よりパ・ド・トロワ
 エレーナ・フィリピエワ
 セルギイ・シドルスキー
 ヴィクトル・イシュク

ヴィクトル・イシュクが実に華奢で、こんなアリでご主人守れる?という感じ。個人的なテクニックを随分アピールしていたようだけど、サポートでは非力さが・・・肩の上にフィリピエワを高く上げるところではいかにも腕がプルプルプル〜 シドルスキーは脚が長くてラインがとてもきれいなダンサー。テクニックも高く、切れ味の良い高速マネージュが印象的だった。

「阿修羅」
 ファルフ・ルジマトフ
 振付:岩田守弘

最初は阿修羅の手を表現した手の動きだけ。マリファントの『TWO』的なのかしら・・・ちょっと退屈・・・と集中が切れかけたところで観客席に鳴り響く携帯電話の音・・・なぜにこの静かな演目でって感じ。しかも2回も。1回目はうっかりだけど、2回は不注意極まりなくありえない。それでもちゃんと踊ってくれるルジ様、プロですね〜。 その後は動きが激しくなってきて、ルジ様の体のラインの美しさを堪能。男性ダンサーでこういったラインの美しさを出せる人は他にないだろう。跳躍などはないけれど、徹底してムーヴメントと体の美しさを魅せる振付。これはこれでありだと思った。

ディアナとアクティオ
 ナタリア・ドムラチョワ
 岩田守弘

岩田さんとても張り切って踊っていらした。テクニックもまだまだ衰えなくて素晴らしい。でも、足技は確かに素晴らしいけど、上半身が美しくなかったのが非常に残念だった。

「ライモンダ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
 吉田都
 セルギイ・シドルスキー

ロバート・テューズリーが直前に降板してしまい、急遽組むことになって、少々踊りにくそうだった。肩の上に乗せられるリフトではぐらつきまくり、観ているこちらもドキドキしたが、乗せられている方も恐いだろうな〜 もちろん、都さんはそんなことは微塵も出さず微笑みをキープしていたが。フィリピエワとのパートナリングは良かったので、やはり急造パートナリングの問題だったのだろう。この後の公演ではきっと良くなる事だろう。

それにしても都さんの美しさ、正確さは素晴らしい。スタイルの非常に良いキエフのコール・ドをバックにしても、彼女の美しさはぬきんでていた。横向きに上方を見上げて手を差し伸べてポーズするとこなどでは首から背中のラインの作り方がコール・ドと全然違うのだ。レッスンを積み重ねて作り上げた完璧さ。あらためて驚嘆した。


第2部

シェヘラザード
 エレーナ・フィリピエワ
 ファルフ・ルジマトフ
 オレグ・トカリ
 ルッスラン・ベンツィアノフ
 ヴォロディミール・チュプリン

本日のメイン・イベント。フィリピエワのゾベイダがとても良かった。王を妖艶に魅了していたかとおもったら、王が出かけたとたんに、奴隷を解放して戯れることを思いつく。この辺りの演技がとても明瞭だった。お気に入りの金の奴隷を解放するや、積極的に情熱的に彼を虜にしていく。王が帰ってきて、金の奴隷が殺された時に、ゾベイダは短剣で金の奴隷を殺した王の弟に切りかかろうとするが止められる。すると、刃を自分に向け、王を見て何度か刺すまねをする。「じゃあ、私が死ぬわよ。いいの?」と聞いていたよう。王がやもうえないと視線をそらすと、ゾベイダは自分の地位を失ったことを悟り、潔く刃を自分のお腹につきたてて、事切れる。・・・こんなだっけな?はっきりとした激しい気性のゾベイダだった。

ルジ様の金の奴隷はやはり色気たっぷりで魅力的。権力のある女性ならばこれは目をつけたくなる魅惑的な奴隷。踊りは省エネモードで跳躍は最小限だったが、回転はかなり全力。素晴らしいものだ。王の弟の演技が非常に細かくて、幕が降りる瞬間まで演技をしていたのがえらかった。コール・ドは今一つかな。宦官と女官達のからみもあまりおもしろくなかった。一番ひどかったのが音楽。ホールのスピーカーが悪いのが、ものすごく・・・気分をそがれ録音だった。

最後のカーテン・コールでびっくり。
最前列の人が全員花束を抱えている・・・!
このためにオケなしなのか?と思うほど。
前方に座っていた友人曰く、周り中熱いルジファンだらけで、何年から彼を観ているかどんな演目を観たか自慢しあっていたそうだ。すご〜い!