オーストラリア・バレエ団『白鳥の湖』マーティン/ウェルチ/ダン 2007年7月13日

興味深い作品でした。オーストラリア・バレエという知名度の低さや新解釈の白鳥ということから、期待値はとても低かったのですが、かなり楽しめました。

舞台美術や衣装はシックな色使いで洗練されていて、とてもセンスが良かったです。へ〜、オーストラリア人でもこんな感性あるんだ〜(失礼)と感心。英国王室のダイアナ妃とチャールズ皇太子とカミラ夫人の関係をベースにしている・・・というストーリー自体は好きになれませんでしたが・・・ これをイギリスで上演したって、かなり大胆・・・  
振り付けは全般的にかなりリフト多用で、男性ダンサーは超ハード!そのせいか?胸板の厚い人が多かったような気がしました。そして、とにかく大変なのはオデット。全4幕、どこでもフルに踊りまくり。心配になるほど・・・ でも、カーティスは最後まで衰えることなく踊っていました。立派です。

音楽は原曲に近い使い方+入れ替えなどがありましたが、最近は結構こういうのにも慣れてきたので、そんなに違和感はありませんでした。

第1幕。の前に指揮者が出てきて、ちょっとびっくり。珍しく女性でした。最後のカーテン・コールで全身のお姿を拝見できましたが、とても華奢で、ゆったりふんわりとした黒いブラウスとパンツスーツがお似合いでとても素敵でした。

さて、シーンはいきなり皇太子じゃない王子とロッドバルト男爵夫人の濡れ場から・・・ そして、ロイヤル・ウェディングへ。ポスターにもなっている長〜いすそのウエディングドレス。さすがにポスターばりになびくことはありませんでしたし、かなり踊りにくそうで、見てても裾を踏まないかハラハラしてしまいました。そのせいか?この衣装のシーンはさほど長くありません。きれいなんだけどね。

パーティの最中も色目使いまくりのロッドバルト男爵夫人にデレデレの王子。祝いの踊りのチャルダッシュはなんだか官能的な振付け・・・・ 王子役のダミアン・ウェルチは金髪の横分けスーパーマンヘア。スーツの上着を脱いで、ワイシャツにベスト、スラックスで踊る姿に一瞬アダムを思い起こさせる・・・(涙)アダムって足も手も長くて、ほんとにかっこいいんだなぁなんて、しみじみしてしまいました。ウェルチ君はもちっと胸板が厚いマッチョさんだったので。

一幕の最後にはさすがにオデットが2人の関係に気付き、狂乱。ジゼルっぽいですね。え〜、もうここまで話を進めちゃうんだ・・・・この後3幕はどうやって話を持たせるのかしら???と思いながら、インターミッション。

第2幕
サナトリウムの一室。完全に正気を失っているオデット。そんなオデットが見る幻影が白鳥たちの世界。白鳥さんたちはチュチュではないけど、Kバレエのよりはふわふわ感があって、なかなかよろしい。奥に円い円卓(?)があり、これを湖に見立ててるわけですね。白鳥さんたちのコール・ドは通常版に近い感じで、4羽の小さな白鳥の踊りなどは、ちょっとアレンジしてあったけど、かなり通常版でした。これまでの演出からは唐突な印象を受けました。4羽の大きな白鳥は2羽になってましたが、きれいにユニゾンしていて、とても美しかったです。それ以外はあまり印象に残りませんでした。

夢から現実の世界に戻ったオデットが見たのは、ロッドバルト男爵夫人と寄り添って歩く王子の姿でした。暗転・・・

第3幕
ロッドバルト公爵夫人の夜会。公然と王子といちゃついています。そこへ最後のファンファーレで現れたのは・・・ 艶やかなオデット!あれ?元気になったのかしら???あのおどおどぶりはどこへ・・・と思う豹変振り。さながら王子を誘惑するオディールのよう。カーティスさんはこちらの方が似合ってる感じ。自信たっぷりに魅力を振りまくオデットに王子はすっかり心を奪われます。すがりつくロッドバルト公爵夫人を投げ捨て(ひどい!)オディールの側へ。怒ったロッドバルト男爵夫人はオデットの病院のスタッフを呼びつけ、オディールは再び病院へ連れ戻されてしまいます。

うーん、この展開は・・・? よく飲み込めませんでした。

第4幕
湖のほとり。黒鳥さんたちの群れ。全員最後まで黒鳥さんでした。なぜかしら?? 王子はオデットに許しを請いますが、オデットは湖に身を投げてしまうのでした・・・。とこの最後も良くわからなかったなー。3幕は復讐で、王子の心が自分に向いても、やはり許せなくて、人生に絶望しちゃって自殺しちゃったのかな・・・


ということで、ストーリー自体は納得しにくいものではありましたが、何をやってるのかはわかりやくし、あまり飽きるシーンがなかっです。・・・ということは、これはこれで結構おもしろかったということでしょう! ただ、バレエを観た気がしなかったような・・・・。

オーストラリア・バレエ団 『白鳥の湖(全4幕)
2007年7月13日(金)18:30開演 東京文化会館 大ホール
オデット: カースティ・マーティン
ジークフリート王子: ダミアン・ウェルチ
ロットバルト男爵夫人: ルシンダ・ダン
女王: シェーン・キャロル
女王の夫: ロバート・オルプ
第一王女: ゲイリーン・カンマーフィールド
第一王女の夫: 藤野暢央
公爵: アダム・スーロウ
公爵の若い婚約者: カミラ・ヴァーゴティス
伯爵: ティモシー・ハーバー
伯爵の侍従: マシュー・ドネリー
提督: コリン・ピアズレー
侯爵: マーク・ケイ
男爵夫人の夫: フランク・レオ
宮廷医: ベン・デイヴィス

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