バーミンガム・ロイヤル・バレエ「Pomp & Circumstances」 2009年4月15日

Birmingham Royal Ballet− Pomp and Circumstances
London Coliseum
15 April 2009 2:30pm -

「Pomp and Circumstance」は「威風堂々」の意。このミックス・ビルの中の演目の一つの「エニグマ・ヴァリエーション」のモデルであり、作曲家のエドワード・エルガーの代表曲のタイトルでもある。ミックス・ビルだから複数形にしたのかな?

それはともかく、3演目はまったく内容の違う演目でかなりおもしろかった! これを1日の間に踊り分けてしまうバーミンガム・ロイヤル・バレエのレベルの高さを感じた。このミックス・ビルは3公演予定されていて、トリプル・キャストが組まれていて、私が観たのはマチネ公演−すなわちサード・キャストだったにもかかわらず、ダンサーの踊りも演技も素晴らしく、大満足だった。BRBのコロシアム・ツアーのチケットは売れ行きがとても悪かったようだが、正直ロイヤルよりもかなり良かったので、とてももったいない!と思った。 

Serenade「セレナーデ」
Music Pyotr Ilyich Tchaikovsky
Choreography George Balanchine(振付:ジョージ・バランシン
Staging Patricia Neary
Costumes Karinska
Lighting Peter Teigen


Three Principal Women: Carol-Anne Millar, Laëtitia Sardo, Céline Gittens
Two Principal Men: Jamie Bond, Matthew Lawrence

ロイヤルよりもよほどプロポーションと踊りが揃っていて、とても美しかった。特にLaëtitia Sardoはすごーい美人で、Carol_Anne Millarはジャンプが軽やかで目を引いた。Céline Gittensはキューバ系で目立つだけでなく、ラインの美しさでも秀でていたけど、まだソリストだったなんて! Matthew Lawrenceはとてもハンサムでプロポーションも良いのに、サポートが下手で踊りは今ひとつ。全体が良かっただけに目立った。


Enigma Variations (エニグマ・ヴァリエーション)
Music Edward Elgar
Choreography Frederick Ashton(振付:フレデリック・アシュトン)
Design Julia Trevelyan Oman
Lighting Mark Jonathan


Edward Elgar エドワード・エルガー (EDU): Matthew Lawrence

The Lady エルガー夫人(CAE): Gaylene Cummerfield
- Elger's wife 'Whose life was a romantic and delicate inspiration'Hew David Steuart-Powell ヒュー・デイヴィッド・ステュアート=パウエル(HDS-P): James Barton
- One of Elgar's chamber music cronies
Richard Baxter Townshend リチャード・バクスター・タウンゼンド (RBT): Christopher Larsen
- An aimiable reedy-voiced eccentric who rode a tricycle
William Meath Baker ウィリアム・ミース・ベイカー (WMB): James Grundy
- With a slip of paper in his hand forcibly read out the arrangements for tthe day and hurriedly left with a bang
Richard P. Arnold リチャード・P・アーノルド(RPA): Steven Monteith
- Son of Matthew Arnold, a quiet contemplative scholar
Isabel Fitton イザベル・フィットン (Ysobel、イソベル): Delia Mathews
- Charming and romantic
Arthur Troyte Griffith アーサー・トロイト・グリフィス(Troyte): Joseph Caley
- A very close friend, outspoken and brusque though 'the boisterous mood is mere banter
Winnifred Norbury ウィニフレッド・ノーベリー(WN): Angela Paul
- Her gracious personality is sedately shown
A. J. Jaeger イェーガー (Nimrod(ニムロッド)): Jonathan Payn
- This variation recalls a summer evening's talk about Beethoven and, further reveals the depth of friendship 
Dora Penny ドーラ・ペニー(Dorabella(ドラベッラ(きれいなドラ)): Momoko Hirata
- 'The movement suggests a dance-like lightness' An intimate portrait of gay but pensive girl with an engaging hesitation in her speech 
George Robinson Sinclair ジョージ・ロビンソン・シンクレア(GRS): Alexander Campbell
- Or rather 'his bulldog Dan whi fell into the river and barked rejoicing on landing. G.R.S said "set that to music", I did; here it is'
Basil G. Nevinson ベイジル・G・ネヴィンソン (BGN): Dominic Antonucci
- 'An amateur cello player of distinction - a serious and devited friend'
Lady Mary Lygon メアリ・ライゴン (***): Victoria Marr
- The asterisks take the place of the name of a lady who was, at the time of compsition, on a sea voyage


(イタリックは実際に配役表に各キャストの下に書かれていたものを転記)


舞台装置や衣装の雰囲気は同じアシュトンの「田園の出来事」をセピア色にした感じ。エニグマ変奏曲で世に認められたエルガーの話が中心なのだが、取り立ててストーリーはない。エルガー夫妻以下はエルガーの友人たちで、キャスト表の順番に従って、入れ替わり登場して、ユニークだったり、超絶技だったり、それぞれに個性的なダンスを繰り広げていく。最初は展開が飲み込めなかったけど、各ダンサーの踊りがいずれ劣らず魅力的で飽きなかった。


幕が開くと、左半分が森と庭、右半分が館の中。エルガーがなにやら浮かない顔で作曲中の譜面?を観ている。エルガーは茶とベージュのチェックのジャケットに茶色のパンツ、口ひげ。エルガー夫人はオレンジのリボンをあしらったドレス。2人のゆっくりとしたPDD。

その雰囲気を壊すように?自転車に乗ってパウエルが登場。ここから、アシュトンのお笑いの始まり。パウエルはチェックのジャケットに半ズボンにブーツ。丸メガネにハンチング帽。動きがすべて笑える・・・。エルガー室内楽団の仲間でピアニスト。

若者4人の踊り。タウンゼンドはアマチュアの俳優、パントマイマー。やはりユニークな動きが多く、最後は三輪車に乗って退場(会場は爆笑)。ベイカーは神経質な人?手に持ったメモを見てせかせか。この辺りお笑いが続く。

アーノルドとイソベルのPDD。イソベルは白のレース地にウェストにブルーのリボンをあしらったロングドレスにブルーの靴。2人のPDDはイソベルが眠っている間に物静かで瞑想好き?なアーノルドの空想の中の出来事なのか?踊り終えるとイソベルはハンモックに戻って眠りについた。

ドラムの力強い音に乗せて跳んで回るトロイト。辛口でぶっきらぼう。キャスト表には「騒々しい雰囲気は単に冗談にすぎない」???

ノーベリーのソロ(記憶になし^^;)、イェーガー(ニムロッド)と女性二人?のPDT。イェーガーは濃いグレーのスーツ。一人だけちょっと洗練されている感じ。彼は楽譜出版会社に勤めているエドガーの親友。エドガーと歩きながら議論をしているようなのは、ベートーベンについて論じ合ったエピソードを表しているらしい。

日本人の平田桃子さんがドーラ・ペニー役。白のレースのドレス、金髪の巻き毛。ちょっと子供っぽい。小刻みなステップが多く、大変そうな振付を楽々こなしていた。

シンクレアはテクニックの強いAlexander Campbell。跳躍、回転が盛り込まれた超絶技を完璧にこなしていたし、さわやかで好感度高し。

ネヴィンソンがチェロを演奏する(演技だけ)中、エルガー夫妻のPDD。やはり、Matthew Laurenceはいまいち。エルガー自身はほとんど踊ることがないのが幸いだった。エルガーが物思いに耽っていると、一人のゴージャスな女性が。ドライアイスの煙の中ゆっくりとした踊り。メアリ・ライゴン夫人・・・らしい。袖の下からドレスの裾に長い布が下がっていて、両腕を広げて風にたなびかせている(ジュディ・オングのように)。これは彼女が航海に出ていることを表しているらしい。

エルガー夫妻と舞台に友人たちが全員登場。エルガーの下に1通の電報が届く。「エニグマ変奏曲」の演奏がロンドンで成功を収めたとの知らせが!一同大喜びで踊りだす。平田さんのシェネが超高速だった。最後はみんなで記念撮影。幕。




'Still Life' at the Penguin CaféChoreography David Bintley CBE
Music Simon Jeffes
Designs Hayden Griffin
Lighting John B. Read


The Great Auk: Sonia Aguilar(オオウミガラス(ペンギンの祖)、1844年に絶滅)
Utah Longhorn Ram: Laëtitia Sardo(ユタ・オオツノヒツジ?)
Texan Kangaroo Rat: Alexander Campbell(テキサストビネズミ?)
Humboldt's Hog-nosed Skunk Flea: Laura Purkiss(フンボルトブタバナスカンクのノミ)
Southern Cape Zebra: Chi Cao(ケープマウンテンゼブラ?(シマウマ))
Now Nothing: Lei Zhao, Yasuo Atsuji
Brazilian Woolly Monkey: Jamie Bond(ブラジリアン・ウーリー・モンキー)

故サイモン・ジェフス率いるペンギン・カフェ・オーケストラの音楽に触発された前衛バレエ。1989年英国ロイヤル・バレエ団初演公演。

おしゃれでユニーク!登場するのは絶滅したあるいは寸前?の希少動物たち。ビントレーお得意の着ぐるみの動物たちがコミカルなダンスを繰り広げていく。一見、子供に受けそうな演目だけど、実は環境問題に対する強いメッセージがこめられている。

幕が上がると、黒の背景の真ん中に南極?な風景が浮かび上がる。ペンギンの着ぐるみが3人、カクテルを銀の丸いトレーに乗せて登場。ステップがとてもかわいい。それから、ロングドレスとタキシードの男女が登場。全員ではなく、ペンギンの被り物をした人と人間のままの人が混在。フロア・ダンスを踊る。それからヒツジの被り物をした3段フリルのロングドレスの女性が登場、タキシードの男性6人を従えて、とてもセクシーに踊る。中でもメインのエスコート役だったJonathan Caguioaがセクシーな魅力にあふれて目が釘付けに(笑)。踊るうちにスカートの裾が引っ張られるとフリルが外れて、超ミニスカートに。脚線美が素晴らしいけど、なぜかしら??

一旦暗転した後、ライトが点くと背景はテキサスの砂漠にサボテンが点在する風景。テキサス・カンガルー・ラットが床に寝そべっている。ネズミの被り物に薄汚れたTシャツ&ダブダブのデニムのオーバーオール。起き上がると、カンガルーのように飛び跳ねるネズミらしく、ちょこまか動きながら、跳ぶ跳ぶ。Alexander Campbell君、名演。

次に出てきたのは、仮面ライダーのような被り物に、蜂のような黄色地に黒のシマシマ模様の長袖ユニタード姿の女性ダンサー。蜂??と思ったら、ノミだったらしい!確かに羽はなくて、ピョコピョコ動いていたなぁ。ノミはなぜかキルトを履いた5人の男性たちと踊る・・・

暗転して、風景はサバンナ?シマウマが登場。被りものはなしで、顔にシマウマメイクで頭はモヒカンのようなタテガミ付きのヅラ、シマウマ模様のユニタード。これまで全般的にコミカルで明るい雰囲気だったが、ここからは音楽もちょっと重い感じ。アフリカっぽい雰囲気。メスのシマウマ?たち?が登場。黒のビスチェに膝ちょっと上のフレアスカート、黒の長手袋、肩には白のフワフワストール、頭にはシマウマ?顔の小さな仮面を帽子のように乗せている女性たち。首の動きなどが、この種の動物っぽい。銃声がしてシマウマが倒れる。キョロキョロする女性たち。

人間が登場。男女と小さな子供。家族なのだろう。お父さん役は厚地康雄さん。すごく背が高くて華奢〜。3人ともおかっぱ頭で顔にはインディアンのようなペインティング、白の長袖ユニタードでなぜか手足は半分から先端にいくにしたがって、黒くなっていく。手袋かと思ったけど、リフトされている子供の白のユニタードが汚れていくので、塗料で塗ったもののようだ。ゆったりとした動き。森の木が切り倒されていくのを呆然と見つめる家族。

一転して、ブラジリアン・ウーリー・モンキーの登場。金のハットオレンジのジャケット、赤と黒の縦じまパンツを履いていて、サーカスのショーの始まり〜という雰囲気。ショッキング・ピンクのドレスを着た女の子2人と踊る?音楽がサンバになり、ノミと一緒に踊っていた男性キルト軍団、ヒツジの女性、ノミやカンガルー・ラット、ペンギン・・・などキャストが全員出てきて、陽気な音楽が終わる。それぞれお面をとって顔を出す。

ライトが点滅。雷??そして、雨が降ってくる。人間が登場し、木を切り倒したことで、気候が変わってしまったのだ。土砂降りの雨の中動物たちは右往左往して逃げ惑う。ペンギンたちだけが残って舞台に立ち止まると、雷に打たれ倒れる。暗転。

舞台の紗幕に船の形が浮かび上がる。少しずつライトが灯り、動物たちの顔が次々と浮かび上がる。ペンギンたちもあとからやってきて船に乗り込む。みんなノアの箱舟に乗ったのだ。静かに幕。

このメッセージは強烈。観た人は皆環境問題についてあれこれ考えながら家路につくことになる。また観てみたい!