バーミンガム・ロイヤル・バレエ「シルヴィア」佐久間&チャオ 2009年04月16日

Birmingham Royal Ballet - Sylvia
London Coliseum
16 April 2009, 7.30 pm

Music: Léo Delibes
Choreography: David Bintley CBE
Designs: Sue Blane
Lighting: Mark Jonathan

Sylvia: Nao Sakuma
Amynta: Chi Cao
Eros: Alexander Campbell
Diana: Elisha Willis
Orion: Robert Parker

ロイヤルのアシュトン版とはかなり違っていて、バレエ団の性格の違いが端的に現れていた・・・というのだろうか。ビントレー版はかなり親しみやすいお話になっていた。

佐久間さんのシルヴィアはお転婆だけどかわいい少女。テクニックもしっかりしているけど、主役オーラが今ひとつな気が・・・彼女が主役をはれるのは、チー・チャオにぴったりなおかげかな?とちょっと思ってしまった。チー・チャオは踊りが端正でラインが素敵。惜しいのは背が低いことなのだ。

華という意味ではディアナ役のエリーシャ・ウィリスがすごい!バーミンガムが来日した時は怪我で観られなかったのが本当に残念に思われた。

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第一幕第1場
幕が開いたら、びっくり。現代風の館の白い壁と窓。これ・・・シルヴィアよね? 大きな生花のアレンジメントが二つ。その手入れをしているのは老人・・・実は愛の神、エロス。歳老いて、世の中や自分の立場に疲れてしまい、人間界に降りて、身分の低い庭師に身をやつし、グィッチオーリ伯爵の館で働いているのだ。

グィッチオーリ伯爵の館では、伯爵夫人との結婚記念日を祝うパーティが行われている。伯爵夫人は黒の細身のロングドレスに毛皮。ちょっとヘップバーンみたい。伯爵は白のタキシード。結婚記念日なのにどうも2人の仲はうまくいっていない。伯爵の浮気癖が原因のようだ。パーティの招待客が次々入ってくる。いかにもおかまなスキンヘッドの2人組も。なぜにこのキャラが必要なのかと思ったけど、それは後でわかる。おかまが余興で古代の衣装を持ってくる。酔いが回っているパーティの参加者は衣装をつけてみる。伯爵もふざけてターザンの衣装のようなものを肩からかけてみる。客たちの酔っ払いダンス。伯爵が女性客に絡む。作業着からオフホワイトのスーツに着替えたエロスもその様子を見ている。

伯爵夫妻の子供たちの家庭教師であるシルヴィアは、タイトスカートのジャケットの固いスーツ姿。伯爵の使用人のアミンタが彼女に思いを寄せているが、恥ずかしさから?シルヴィアはアミンタを避けようとする。そこへ伯爵がやってきて、シルヴィアに迫り始めるが、シルヴィアは思わず伯爵の頬をはたいてしまう。その様子を影から見ていた夫人はひどく失望する。

エロスの像の前でのアミンタのソロ。思いがなかなか通じない切なさが出ていて、ちょっと胸がきゅんとした。エロスがアミンタに何事かささやくと、舞台は一転して古代の世界へ、月明かりに照らされた洞窟に。アミンタはエロスの像の後ろへ隠れる。エプロンを落としてしまったことに気づかずに・・・。

第一幕第2場
ホルンの特徴的なフレーズ。シルヴィアとニンフたちが登場。さらに、ニンフたちと狩りの女神ディアナが登場。シルヴィアの佐久間さんよりディアナのエリーシャ・ウィリスの方が華がある。衣装もゴージャスなので、どうしても女神の方が目立ってしまう。ディアナが湯浴みをした後、一同眠りにつく。喉を潤すために起きたニンフの一人がエロスの像の前に落ちていたエプロンに気づいて騒ぎ出す。発見されたアミンタがディアナの前に引きずり出され、怒りに満ちたディアナは矢の羽でアミンタの顔を殴りつけ、アミンタは気を失う。この間にエロスがシルヴィアの背後にそっと近づき、シルヴィアに魔法?をかける。ディアナがアミンタにさらにとどめを誘うとすると、シルヴィアはとっさにかばう。ホルンのフレーズ。ディアナたちはアミンタをその場に捨て置き、再び狩りへ出発する。

洞窟の上に男の姿が。オリオンだ。長い髪にもろ肌でターザンみたいな格好。見るからに粗野で野蛮な感じ。ターザンよろしくツタを頼りに洞窟へ降りてきた。ふと気配に気づき、隠れる。シルヴィアが戻ってきた。アミンタが死んでしまったと嘆いていると、アミンタが起き上がる。が、シルビアを素通りしてしまう。アミンタは目が見えなくなってしまったのだ。すれ違いな2人のPDD。

そこへオリオンが出てきてシルヴィアを連れ去るが、盲目のアミンタにはどうすることもできない。嘆きのソロ。すごい跳躍。絶望してエロスの像の前で倒れる。エロスの像が反転して登場したのは人間の老人の姿のままのエロス。エロスが矢を放ち、その矢に導かれ、アミンタはシルヴィアを探しにいく。

第二幕
オリオンの洞窟。さらわれて来たシルヴィアは気を失ったまま。気絶したままのシルヴィアと踊るオリオン。目覚めて、自分が着替えさせられていることに驚くシルヴィア。アシュトン版だと、シルヴィアは色っぽいハーレム風の衣装に着替えさせられているが、ここでは黒のシンプルなミニ・ドレス。迫りまくるオリオンと抵抗するシルヴィアのPDD。

なんとか逃げ出そうと一計を案じるシルヴィア。ここでひょっこり出てくるのがオリオンの手下のGogとMgog。。。あのスキンヘッドのおかま2人組!あの強烈キャラはこのシーンのための2人だったのかっ!シルヴィアはこの2人にワインを作らせる。2人でお互いを補助しながら交互に側転を繰り返す・・・というアシュトン版の奴隷の踊りと同じ振付も。オリオンは出来上がったワインをたらいごと飲み干してぶっ倒れる。が、すぐに起き上がってもう1杯飲み干す。アラビア風の音楽でシルヴィアのソロ。舞うように踊るが、アシュトン版の方がもっとセクシーな踊り。シルヴィアは酔っ払ってフラフラなオリオンの隙を見て逃げ出そうとするが、出口がガラクタでふさがれていて、出られない。オリオンがしつこくまた目を覚ますが、再びぶっ倒れる。せっかくのチャンスなのに逃げられず、泣いていると、ガラクタが動き出し、アミンタとエロスが現れる。

アミンタは目隠しをしている。まだ目は見えないままなのだ。シルヴィアの姿も見えていない。シルヴィアはオリオンと過ごした一夜を恥じて(とあらすじに書いてかったけど、いたしちゃったってこと??)、アミンタを残して夜の闇の中へ走り去ってしまう。(かわいそうなアミンタ!)アシュトン版もそうだけど、シルヴィアはかなり出ずっぱりで踊りまくりだが、アミンタはここまで見せ場がない!

第三幕
海の側のディアナの神殿では、おつきの女神とニンフたちがディアナの神々しさを讃えている? アミンタはシルヴィアがディアナの元へ戻ってきているのではとよろよろになってやってきたが、神殿の護衛に投げ飛ばされてしまう。4人の女神たちのソロ。平田さんがアポロの役だが、振付はゆったりしていてあまり見是場がなかったのが残念。ディアナ&コールドの踊り。とても揃っていて、圧巻。ディアナは金の甲冑でド派手。

一艘の海賊船が到着し、奴隷の女たちをディアナに売ろうとする。海賊の船長は片手がフックで片足は義足・・・だが、折り曲げた足が尻尾みたいに後ろからでているのをわざとらしく見せて笑いを取ったりする。

奴隷女たちの踊り。その中にはシルヴィアが。ディアナが一人一人手荒に(結構乱暴だった)見て、シルヴィアに興味を示すが、ディアナとの貞節を守るという誓いを破ってしまっためディアナの側には戻れないシルヴィアは海賊の首領に自分を売らないで欲しいと懇願する。その声でシルヴィアだと気づいたアミンタがその中に入ってくる。ズタボロなアミンタに思わず駆け寄るシルヴィア。海賊の首領がアミンタの目隠しを取ると、アミンタの目が見えるように! 海賊の首領は実はエロスだったのだ。

海賊たちの踊り。エロスは片足義足で良く踊る!グラン・フェッテまで!しかもかなり高速!と首領が踊りまくっているうちに、船が出てしまう。首領があわてて海に飛び込むと豪快な水しぶき(演出が細かい!)

アミンタとシルヴィアが白のきれいな衣装に着替えて登場。PDD。チー・チャオはラインがとても美しくてエレガントだし、サポートもめちゃうまい。ピルエットは目が覚めるようなスピードで、マネージュにはきりもみも入っていて、テクニック全開。佐久間さんもずーっと踊っているのに衰えることなくタフ〜。

そこへオリオンがやってきて、シルヴィアとアミンタに襲い掛かろうとするが、自分の神殿を犯した怒りが頂点に達し、神殿の入り口を吹き飛ばしてでかい馬(模型)に乗って登場(ここでは笑いが起きた)。オリオンをあっという間に蹴散らして、さらにその矛先がシルヴィアとアミンタに向けられようとした時・・・ 再び老人の姿に戻ったエロスがいつの間にか馬の前に。ディアナにシャンパンのグラスを渡すと、舞台は一転・・・あっという間にグィッチオーリ伯爵の館に戻る。エロスのとりなしにグィッチオーリ伯爵が夫人に不徳を詫び、許しを請う。2組のハッピーエンドを見届けたエロス爺さんの背中には天使の羽が。

ビントレーらしいファンタジーいっぱいのシルヴィアでした。おもしろかったー!