ブベニチェクとドレスデン国立歌劇場バレエ団の俊英たち


ブベニチェクとドレスデン国立歌劇場バレエ団の俊英たち
2010年1月24日(日)15:00 -

ドレスデン国立歌劇場バレエ団
プリンシパル:イリ・ブベニチェク、ギィ・アルブイ
ファースト・ソリスト:エレナ・ヴォストロティナ、カテリーナ・マルコフスカヤ
セカンド・ソリスト:スヴェトラーナ・ギレヴァ、オレグ・クリィミュク、ヨン・ヴァイェホ
コリフェ:浅見紘子、ドゥオシー・ジュウ、イシュトヴァン・シモン、クラウディオ・カンジアロッシ
コール・ド・バレエ:ラケル・マルティネス
ハンブルク・バレエ団
プリンシパル:オットー・ブベニチェク
アンサンブル:大石裕
フリーランス・ダンサー
ドミニク・ストロブル


ブベニチェク兄弟のステージやドレスデンはなかなか観る機会がないので、がんばって彩の国まで行くことにしたが、大正解!

「辿り着かない場所」はやはりテーマがテーマだけに、ちょっとどんよりしたが、ステップテクストのキレキレな踊りに感激、最後の ル・スフル・ドゥ・レスプリは美しくて力強くて明るくて・・・幸せにいっぱい満ちてきて、最後は涙が出るほど感動した。

Unerreichbare orte 辿り着かない場所 (日本初演
(2005年/ハンブルク・バレエ団)
振付:イリ・ブベニチェク
音楽:オットー・ブベニチェク
衣装:エルザ・パヴァネル
出演:オットー・ブベニチェク/エレナ・ヴォストロティナ/ギィ・アルブイ/ドゥオシー・ジュウ/カテリーナ・マルコフスカヤ/ヨン・ヴァイェホ/浅見紘子/イシュトヴァン・シモン/スヴェトラーナ・ギレヴァ/ラケル・マルティネス/大石裕香/オレグ・クリィミュク/クラウディオ・カンジアロッシ/ドミニク・ストロブル

ステージは幕が開いていて、床には大きな布が渦巻きをつくって置いてある。この上でどうやって踊るのかしら??と思ったら、暗転。手前のスポットライトがついた時には1組の男女があの布をスカートのように着用していた。上半身は裸(女性は肌色のトップ)。絡みつくような踊り。オットーと大石さん。

次に下手手前でもう1組がぼんやりと浮かび上がる。スカートの中には円卓があってそれに乗っているようだ。最後に舞台中央奥にもう一組が浮かび上がる。何かに束縛されて、もがくような踊り。音楽はマリファントのTWOみたいな感じ。

舞台が暗転し、気がつくと手前のオットーと大石さんはスカートからすっぽり抜け出していた。さなぎが成虫になるように。

3つの壁が転がされながら運ばれてくる。セットもなかなかユニーク。
ここから舞台は明るくなる。3組の男女が3つの壁を使いながら踊る。
全員登場。ロビンズのウェストサイドストーリーのような印象。エネルギーが一杯の激しい踊り。女性が男性をパンチ?して、男性がそれをのけぞってかわしたところで全体の動きがストップ、しばらくホールド。男性陣は生マトリックス状態。
暗転。1組の男女が出てくる。英語の台詞が流れてくる。I love to love you.
2人は下手の壁をからめて踊る。壁にはそれぞれ大きさの異なる扉がある。この扉から出ようとするのか。
別のカップル。I love to hate you
さらに別のカップル。I hate to love you
I hate to hate you
音楽は終始効果音的なものだし、40分強と上演時間が長く、集中が途切れて、かなり記憶が曖昧・・・・


ステップテクスト ドレスデン国立歌劇場バレエ団 "特別ヴァージョン"
(2004年)
振付:ウィリアム・フォーサイス
音楽:J.S.バッハシャコンヌ
出演:イリ・ブベニチェク、エレナ・ヴォストロティナ、オレグ・クリィミュク、クラウディオ・カンジアロッシ

休憩時間がそろそろ終わろうという頃、まだ客席は3分の2ぐらいしか着席していないぐらいの時に席に戻り、パンフレットに眼を通していた。気配にふと眼を上げると、ステージにはイリが!下手手前でクモのようなポーズを取っているではないですか!ファンサービスにアップを見せてるのかしら?と思いつつ、ありがたくじっくり拝見させていただく。いろんなステップを踊って見せるイリ。あれは「カノン」かな?なんて振りも。

休憩から戻ってきたお客さんたちが驚きながら席に着く。全員席についてもイリの踊りは終わらない。シャープな動き。イリってまだまだすごく踊れるのね・・・と感心することしきり。
全員着席してもまだイリの踊りは続き、一体どうなってるの?と思ったら、録音されたヴァイオリンの音が一瞬流れてすぐ止まった。あれ?もう始まってるの?客席は明るいまま。
そのうち、もう一人オレグ・クリィミュクまで出てきた。イリが舞台奥の四角い壁の奥へ下がり、今度はオレグ・クリィミュクが同じように踊り始め、またヴァイオリンの音。イリが出てきて、2人が踊り始める。音楽が始まる。ようやく客席のライトが落ちた。これはsteptextだと当たり前のスタートなのだろうか?(調べてみたら、やはりそのよう。何でもダンスのリハーサルシーンをテーマとした作品だとか。納得)

男性3人は黒のユニタード、女性は赤。「イン・ザ・ミドル・・・」のように、エッジの効いたぎりぎりまでタイトに切り詰めたような振付で、男性同士、男女と組み合わせをくるくる変えながら、めまぐるしく踊りが展開する。

イリの踊りはとても俊敏で空気を切り裂くようだった。「幻想〜」の演技力も捨てがたいけど、コンテも素晴らしい。こういうのを踊るためにハンブルクを出たんだよなぁとしみじみしながら観た。

エレナ・ヴォストロティナは長身で細身。ドレスデンシルヴィ・ギエムと呼ばれているそうだが、確かに身体能力は高い。片手同士でのリフトされながらの開脚は180℃を超えていた・・・ ただ、少し猫背?というか背中のラインが気になった。顔が小さすぎるから??


Le souffe de l'esprit ル・スフル・ドゥ・レスプリ―魂のため息―日本初演
(2007年/チューリッヒ・バレエ)
*最後のパートは、『カノン』として「エトワール・ガラ2008」にて上演された
振付:イリ・ブベニチェク
音楽:ヨハン・パッヘルベル『カノンニ長調』/J.S.バッハG線上のアリア』/ロマン・ホフステッター『弦楽四重奏ヘ長調5番』/オットー・ブベニチェク『天使の到着』『サイレンス』『天使の出発』
舞台装置&映像製作/衣裳:オットー・ブベニチェク
照明デザイン:マルタン・ゲバー
出演:イリ・ブベニチェク/オットー・ブベニチェク/ヨン・ヴァイェホ/ギィ・アルブイ/カテリーナ・マルコフスカヤ/エレナ・ヴォストロティナ/スヴェトラーナ・ギレヴァ/ドゥオシー・ジュウ/ラケル・マルティネス/浅見紘子/オレグ・クリィミュク/クラウディオ・カンジアロッシ/イシュトヴァン・シモン


本日はこれにつきる!「エトワール・ガラ2008」で一部を観た時も感激したが、通しで観ることが出来て本当に良かった!明るくて清らかで、心が浄化されるような演目だった。終わった時には自然と涙が出た。

まずもって音楽がどれもとびきり美しい。そして振り付けが音楽にとても合っていて流麗。そして、ダンサーたちは全員ずっと幸せそうな微笑を浮かべながら、音楽を奏でるように踊っているのだ。これで幸せな気分になれない訳がない。

ステージ奥には壁一杯の大きな白い壁。白い明るいライトが照らされて、白い衣装の3人のダンサーが踊り始める。真ん中がヨン・ヴァイェホと両脇がオットーとイリ・・・・ いや、こうやって並ばれると全然区別がつかない!一体どっちなんだ〜

衣装は全員白なのだがそれぞれちょっとずつ違う。イリとオットーは一人が胸元にちょっとフリルがついたサテンっぽいシャツ、もう一人がノースリーブのシースルーで右肩にタトゥ。おぉ、これで区別はつく!

ほんとにそっくりな2人だが、2人をじっくりと見比べるとわずかな違いに気付く。イリの方が若干鼻がかぎ鼻っぽく、エラがはっている。踊りもイリの方がちょっとシャープで身体能力が高い。そう思って観ているうちにだんだん2人の違いがはっきりと分かるようになってきて、すっきり!下手にいたのがオットーで上手のタトゥがイリだった。

それはさて置き、最初の3人が踊り始めると、背後の巨大な壁に絵画が映し出される。イリがインスパイヤされたというダヴィンチの絵だろうか。クローズアップされていた絵がだんだん全体像になったりとこちらにも動きがある。

最初は3人の踊りだったが、他のダンサーたちが入ってきて、男女ペアで踊ったり、イリやオットーのソロだったり。カノンは前に「エトワール・ガラ」で観たものと同じ振付?と思うほど、印象が違った。3人の踊りの切れ味が同レベルで、もっと男っぽくダイナミックなんだけど、きれいなのだ。センターが違うとこんなにも違うか。もちろん、踊りこみの違いもあるのだろうが。

いつまでもいつまでも観ていたかった。

終わっちゃった・・・・と思ったら、再び「カノン」のフレーズが。フィナーレでは、男女のペアが一組ずつカノンにあわせて、ちょこっとずつ踊ってリフトしてきめポーズを見せてくれた。

会場も大盛り上がり。上がりすぎな方もいらしたのはちょっと・・・だったが。とにかく、素晴らしい公演だった。ル・スフル・ドゥ・レスプリ、また観たい〜!

さいたま劇場はこじんまりしているが、舞台が近くて観やすい劇場だった。車で1時間もあればいけるし。この機会は逃さなくて本当に良かった。