グルジア国立バレエ『ジゼル』 アナニアシヴィリ&ウヴァーロフ 2010年3月3日

私はニーナにもウヴァーロフに対してもそんなに思い入れがないので、正直『ジゼル』の公演としてはチケット代に見合うものと思えなかった・・・・ 

改訂振付はニーナのためなのか、バレエ団のレベルのためなのか、とても退屈なものとなってい。特に一幕。主役の踊りが大幅に端折ってあり、踊ったとしても、ニーナは極力跳ばないように走らないようにした踊り。さすがに二幕はそこまで端折ってなかったが、舞台奥をすばやく走ったり、グラン・パ・ド・ドゥの最後の連続ジュテのシーンではニーナの替え玉が登場するという大技。こんなの初めて見た。

ニーナでないとチケットが売れないという主催者の意図があるので、調子が悪かろうがなんだろうが降板できないのはわかるが、ここまでして往年のファンはニーナを観たいのだろうか。

前回の来日公演はそれなりに楽しめた。ニーナもそれなりのレベルをキープしていたし、ドン・キのキャストがゲストが来日出来なくなって、バレエ団のラリ・カンデラキがキトリをつとめることになったのだが、彼女がそれは素晴らしくて十分に満足できたのだ。ニーナ自身、インタビューで主役を勤められるダンサーがいるのに主催者の意向でキャストできないことに不満をもらしていた。実際良いダンサーも何人かいた。

キャスト表に名前がなかったのだが、パ・ド・シスに加わって、跳躍、回転しまくっていた東洋系のお顔の小柄な男性ダンサー。トゥール・ザン・レールが高いし、フィニッシュがぴったり決まっていた。一幕の清涼剤だった。っていうか、なぜこのシーンが「パ・ド・シス」なの?【追記】休憩時間にホワイエで「配役の追加」(!)として掲示されていたらしいが・・・詳細は未確認。「追加」って・・・?

それから、ドゥ・ウィリの2人、そしてニーナの替え玉さん(多分、直前にドゥ・ウィリを降板したニーノ・ゴグア)。

もちろん、ニーナのポール・ド・ブラや演技は至極だし、ウヴァーロフはとても調子が良いようで、着地音をほとんど立てない踊り。怪我から復帰した後しばらくは体が重そうでもうだめかな・・・と思って観たこともあったが、すばらしいレベルに復帰している。そして、ニーナが踊らない分、ダイナミックなリフトを見せてカバーしたり、2人の信頼の深さに基づいたパートナーシップはとても良かった。

期待はずれだったのはミルタのラリ・カンデラキ。ポール・ド・ブラが美しくないのだ。身体能力の高さは相変わらずで、ジュテやマネージュの時の跳躍の高さは驚異的だったが、ミルタとしての造型になっていなかった。以前の白鳥でもまったく目にとまらなったのも納得。

前回の公演で私が超気に入ったコール・ドの彼は見当たらなかったような。アルブレヒトの友人のユーリー・ソローキンだったのかな? 男性陣には前回の主要キャストの名前も見当たらない・・・・。政情不安やロシアとの対立の中でバレエを続けていくことは難しいのだろう。

最後はスタンディング・オベーションだったから、やはり、ファンなら彼女が舞台に立つ姿を見られるだけで良いのかな。。

厳しい情勢のグルジア・・・ジョージアとニーナの支援と思うことにしよう・・・・

グルジア国立バレエ『ジゼル』
2010年3月3日(水) 19:00〜21:15 東京文化会館

音楽 : アドルフ・アダン
台本 : テオフィル・ゴーチエ,ジュール=アンリ・ヴェルノワ・ド・サン=ジョルジュ
振付 : ジャン・コラーリ,ジュール・ペロー,マリウス・プティパ
振付改訂 : アレクセイ・ファジェーチェフ
改訂振付補佐 : タチヤーナ・ラストルグーエワ
装置・衣裳 : ヴャチェスラフ・オークネフ
照明 : パウル・ヴィダル・サーヴァラング
指揮 : ダヴィド・ムケリア
管弦楽東京ニューシティ管弦楽団

<出 演>
ジゼル : ニーナ・アナニアシヴィリ
アルブレヒトアンドレイ・ウヴァーロフ
ベルタ(ジゼルの母) : ニーノ・オチアウーリ
アルブレヒトの友人 : ユーリー・ソローキン
公爵(バチルドの父) : パータ・チヒクヴィシヴィリ
バチルド(アルブレヒトの婚約者) : マイア・アルパイーゼ
ハンス(森番) : イラクリ・バフターゼ
ジゼルの友人 : アンナ・ムラデーリ,ニーノ・ゴグア,ナティア・ブントゥーリ,エカテリーナ・スルマーワ,ニーノ・アルブタシヴィリ,エカテリーナ・シャヴリアシヴィリ
パ・ド・シス : テオーナ・アホバーゼ,ニーノ・マハシヴィリ,ラーナ・ムゲブリシヴィリ,ニーノ・マティアシヴィリ,ワシル・アフメテリ,オタール・ヘラシヴィリ
ミルタ(ウィリの女王) : ラリ・カンデラ
ウィリたち : ニーノ・ゴグア(エカテリーナ・シャヴリアシヴィリ?に変更),アンナ・ムラデーリ

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