<マラーホフの贈り物>プログラムB 2010年5月22日

ボリショイのペアがキャンセルになって結果的に良かったと思った。シュツット・ガルト組が場内の雰囲気を独占していた状況を考えると、これでボリショイ組がいたら、ベルリン・チームの存在感はもっと希薄になってしまっていただろう。素直にベルリンのダンサー達を楽しめたし、また来年もバレエ団に来日公演のプロモーションにもなったと思うから。

‐第1部‐

カラヴァッジオ」よりパ・ド・ドゥ(第1幕より)
振付:マウロ・ビゴンゼッティ、音楽:ブルーノ・モレッティクラウディオ・モンテヴェルディより)
ポリーナ・セミオノワ ウラジーミル・マラーホフ

セミオノワはモダンが一番良い。肌色にミニマルなレオタードは彼女のプロポーションの良さを引き立てる。

「ディアナとアクティオン」
振付:アグリッピーナ・ワガノワ、音楽:チェーザレ・プーニ
ヤーナ・サレンコ ディヌ・タマズラカル

サレンコちゃんはやっぱりこういう演目から逃れられないのね。でも、逆にこれがきちんと出来るダンサーがベルリンには他にいないってことかしら。パンフレットに彼女の正確なテクニックをマラーホフ監督は寵愛しているというような記載があったし。ディヌ・タマズラカルもほんとに良く跳び回ること。外側を向いて連続旋回するマネージュ(カレーニョがよくやるやつ)もやっていたけど、ちょっといっぱいいっぱい感があってポーズが美しくなかったかな。カレーニョとかキューバのロメル・フロメタのマッチョな印象が強くて、タマズラカルがやや貧弱に見えてしまった。

「カジミールの色」
振付:マウロ・ビゴンゼッティ、音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ
エリサ・カリッロ・カブレラ ミハイル・カニスキン

このペアで観るのは二度目だし、ビゴンゼッティの似たような路線のものが多いのでちょっと退屈だった。

「モノ・リサ」
振付:イツィク・ガリリ、音楽:トーマス・へフス
マリア・アイシュヴァルト マライン・ラドメイカ

フォーサイスの『In the middle...』を思わせる作品。 エッジのきいた振付・・・というのだろうか。男女がテコンドー?でもやって闘っているようなダンス。ライティングがクールでおしゃれ。
マリア・アイシュヴァルトのコンテは初めて。体が小さいので、少し舞台の上での脚の軌跡があっという間に消えてしまうのが惜しいけれど、シャープで柔軟性のある踊りも十分素晴らしいところを見せ付けてくれた。 何より金髪をオールバックになでつけ、最後は黒パン一丁になってしまったラドメイカー君に鼻血もの。
会場の受けも良くて、カーテンコール3回。

「瀕死の白鳥」
振付:ミハイル・フォーキン、音楽:カミーユ・サン=サーンス
ベアトリス・クノップ

デフォルトがロパートキナになっているので・・・もう少しリアルな鳥だったかな。
音楽が終わって照明が落ちたところで、カーテンが下りず、クノップが舞台袖へ走り去り、入れ替わりにセンターに入った人が。ここで私はピンときました。
照明がつきまた同じ音楽が流れ始め、白パンマラーホフが踊り出す。プログラムにはないサプライズ。こうやって対比させるのも一興。

‐第2部‐

「ラ・バヤデール」より"影の王国"
振付:マリウス・プティパ、音楽:レオン・ミンクス
ポリーナ・セミオノワ ウラジーミル・マラーホフ
第1ヴァリエーション:ヤーナ・サレンコ
第2ヴァリエーション:乾友子
第3ヴァリエーション:エリサ・カリッロ・カブレラ 
ほか東京バレエ団

これはセミオノワが良かった!やはり感情表現が伴わない演目が非常に良い!・・・(それはそれでダンサーとしてどうなのかとは思うが)・・・
マラーホフはサポートのみでヴァリエーションはなし。もはや古典はきついのでしょうか。
3人の精霊が同時に同じ振りで踊ると、サレンコの踊りの正確性が群を抜いていた。よくみていると、脚をア・ラ・スコンドに上げる時、毎回同じ高さにきっちりつま先まで意識して上げていたりするところに差がはっきりとでていた。カブレラさん、初クラシック。なかなか。乾さんも引けをとっておりませんでしたよ。

‐第3部‐

ロミオとジュリエット」より第1幕"バルコニーのパ・ド・ドゥ"
振付:ジョン・クランコ、音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
マリア・アイシュヴァルト マライン・ラドメイカ

うう〜ん、素晴らしい!!ドキドキしながら観ました。
バルコニーに出てきたアイシュヴァルト。うっとりと舞踏会を思い出している表情が本当に少女のようにあどけない。
ラドメイカーは赤のマント!シュツットガルトのはこんなだっけ?前回観たのは2005年11月なので、もうかなり忘れてしまった。
バルコニーがシュツットガルトのものではなかったけど、お姫様抱っこはあって、懸垂キスはなし・・・残念。クランコの振付はマクミランよりストレートで演技的。2人の雰囲気はとても良くて、物語の恋の高まりにこちらまで胸を高鳴らせてしまった。
Aプロの時もそうだったけど、カーテンコールでは唇キスを交わしていてとてもラブラブな感じの2人だったけど、ラドメイカーは確か彼氏がいるから違うはず・・・

カラヴァッジオ」よりパ・ド・ドゥ(第2幕より)
振付:マウロ・ビゴンゼッティ、音楽:ブルーノ・モレッティクラウディオ・モンテヴェルディより)
ベアトリス・クノップ レオナルド・ヤコヴィーナ

緊張感のある振付・・・ ヤコヴィーナはやはり男性的で素敵〜 

「レ・ブルジョワ
振付:ベン・ファン・コーウェンベルグ、音楽:ジャック・ブレル
ディヌ・タマズラカル

2003年の世界バレエフェスでバランキエヴィッチが踊った演目。バランキエヴィッチの方がもっと酔っ払いみたいに抜けてたけど、タマズラカル君も楽しそうで良かった。

「ファンファーレLX」
振付:ダグラス・リー、音楽:マイケル・ナイマン
エリサ・カリッロ・カブレラ ミハイル・カニスキン

ん〜、コンテはもういいや・・・って感じだったので、ダンサーにありがたみがないとちょっと辛かった。あ、そう言えばダグラス・リーの振付作品だったのにね。

ラクリモーサ」
振付:エドワード・スターリー、音楽:ヴォルフガング・A.モーツァルト
ウラジーミル・マラーホフ

私がこれまで観たマラーホフのソロ作品はいずれもほぼセンターにいたまま、腕や体の動きを見せるものが中心だったような気がするのだけど、この作品には跳躍やマネージュも盛り込まれていて、美しい跳躍でステージいっぱいに動き回るマラーホフが堪能できた。私のマラーホフ歴は浅いので、その間膝の具合が悪かったことを考慮すれば、今は膝が完全に直って、調子が良かったのだろう。監督職をこなしつつ、この年齢にしてこのレベルにもっていけるのは素晴らしい。
ルグリさんにもこういう路線どうでしょう??

上演時間◆ 【第1部】 15:00−16:00
休憩 15分
【第2部】 16:15−16:45
休憩 15分
【第3部】 17:00−17:40