ベルリン国立バレエ「チャイコフスキー」 2011年1月23日

エイフマンのバレエ・・・そしてそれを演じたマラーホフがすごい!凄すぎる!これをライブで観ることが出来たのはすごく幸せ!

舞台装置や衣装など、演出面では新国立で観た「アンナ・カレーニナ」と相似している部分が多かった。黒い背景にミニマルな大道具で照明を効果的に利用、曲目は違うがチャイコフスキーの音楽、小道具のベッド、カラボス一味のヴェネツィア式仮面舞踏会っぽい衣装、女性のドレスは上半身はぴったりとしていてドレープの美しいスカートがついたものであり、細かい衣装替え、アクロバティックなリフトの数々、脚の動きが印象的な振付、コール・ドの殺人的なステップ、人間の欲望をさらけ出した濃密な場面が次々と繰り出され、最後は死体をさらして幕・・・

アンナ・カレーニナ」と違うのは、小説のストーリーに沿った展開ではなく、チャイコフスキーの人生を彼の代表的・・・象徴的な作品を織り交ぜながら描いていっている点。「眠り」、「くるみ」、「白鳥」、「スペードの女王」・・・そして、おもしろいのはそれらの著名な作品の登場人物を使いながら、その原曲はまったく使用していない。それが余計に幻想や悪夢の中の展開であることを強調していたように感じた。「アンナ・カレーニナ」では、ひたすら濃密なダンスが繰り返され時間は短いのに最後はちょっと辟易とする部分もあったのだが、この作品では「眠り」や「くるみ」そして特に「白鳥」の白いコール・ドが組み込まれることによって変化を生じ、さらに厚みや深み、広がりが出来たと感じた。

そしてマラーホフ!己を完全に捨てきって、役になりきって演じていたのはもちろん、なんと言ってもその踊りやラインの美しさは筆舌につくしがたいものがあった。終始舞台にいて、踊り続けているのに、この年齢にしてまだまだこんなに高いレベルで踊りきることが出来るなんて驚異的だ。これまで、マラーホフの踊りで正直心を動かされたことはなかったのだが、本当に稀有なダンサーなのだと初めて思わされた。そして、久しぶりに服を着ていた・・と思ったら、やはり最後は上半身裸のままだったけど(笑)

マラーホフ以外のキャストも良かった。なんと言って妻のサイダコーワ。最後はマノンの沼地のようにぼろぼろでスキンヘッドになってしまうのだが、鬼気迫る演技。彼女はチャイコフスキーをひたすら求めていただけなのに・・・と思わずかわいそうになった。それから、分身/ドロッセルマイヤー役のヴィスラウ・デュデクは長身の超ハンサム!マラーホフの分身には随分大きかったけど、自己愛の象徴とすれば、これぐらい美丈夫でも良いのかも。フォン・メック夫人役のベアトリス・クノップもロングドレスが長身に似合っていてとても素敵だったが、この役どころは今一つわかりにくかった。

王子(若者/ジョーカー)の ディヌ・タマズラカルも良かった・・・最初は眠っている王子。チャイコフスキーのキス(!)で目覚め、いきなり踊る。結構長い眠りからいきなりで大変だろうが、すごくきれいに踊っていた。バー・レッスンがすごくまた美しくって、鍛錬したダンサーの動きって全然違うんだな〜と見入ってしまった。ヤーナ・サレンコとの少女との踊りも絵になる。サレンコの出番はこのほんの一瞬なのだが、王子の心をとらえる本当にかわいらしい少女を一瞬にして印象付けていたのはさすがだ。

コール・ドも素晴らしかった〜 特に男性陣!「シンデレラ」と格段に違う印象!最初の黒鳥はロン毛に胸をはだけた黒の総タイツでセクシー!貴族はスマートなタキシード。特にこのリードの3人がめちゃかっこよくて・・・名前が全然わからなかったのが残念!「スペードの女王」のカードのシーンもすごかったなぁ。ディヌ・タマズラカルのジョーカーの赤タイツに前述の3人だったか、やおら服を脱ぐと胸がハートに大きくカットされた、これまた黒の総タイツ。サービスとしてか思えないセクシーな(ちょっとベタ過ぎて笑えたけど)衣装に鼻血ぶー。ここではボレロのような大きな円卓を斜めに立てたり、滑り込んだり、最後は・・・と非常におもしろく効果的に使っていた。一番おもしろいシーンだったかも。

これはもう1回観るべきだった!残念!

ベルリン国立バレエはマラーホフの振付じゃないものをやった時の方が全然印象が良い。以前、ベルリンで観たP・バール版の「くるみ」もすごく良かったのに、正直「シンデレラ」はかなりがっかり。マラーホフの「眠り」もあんまり・・・だったし、彼の振付は私の趣味に合わないのだろう。

それから、エイフマン・バレエの来日熱望!

ベルリン国立バレエ「チャイコフスキー全2幕
2011年1月23日(日)15時〜 東京文化会館




台本・振付・演出: ボリス・エイフマン
音楽: ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
装置・衣裳: ヴァチェスラフ・オクネフ

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チャイコフスキー: ウラジーミル・マラーホフ
分身/ドロッセルマイヤー: ヴィスラウ・デュデク
フォン・メック夫人: ベアトリス・クノップ
チャイコフスキーの妻: ナディア・サイダコワ
王子(若者/ジョーカー): ディヌ・タマズラカル
少女: ヤーナ・サレンコ


ヤーナ・バローヴァ、アニッサ・ブリュレ、エロディー・エステーヴ、ヴェロニカ・フロディマ、
マリア・ジャンボナ、ステファニー・グリーンワルド、針山愛美、ヨアンナ・ヤブロンスカ、
エリナー・ヤゴドニク、菅野茉里奈、アナスタシア・クルコワ、ワレリア・マナコワ、ニコレッタ・マンニ、
サラ・メストロヴィック、ナターリア・ミュノス、クラジィーナ・パヴロワ、クリスティアーネ・ペガド、
巣山 葵、寺井七海、ヴェレーナ・サーム


マルチン・アロヨス、ゲヴォルク・アソヤン、ミハエル・ファトゥラ、アルシャク・ガルミヤン、
ドミニク・ホダル、アレクサンドル・コルン、クリスティアン・クレール、マリアン・ラザール、
アルトゥール・リル、ウラジスラフ・マリノフ、エイメリック・モッセルマンズ、アレクセイ・オルレンコ、
ハビエ・ペーニャ・バスケス、ケヴィン・プゾー、スフェン・ザイデルマン、アレクサンドル・シュパク、
デイヴィッド・シミック、フェデリコ・スパリッタ、マルチン・シィマンスキー、ウリアン・タポル、
メフメト・ユマク




指揮: ヴェロ・ペーン
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


◆上演時間◆
第1幕 15:00 - 15:50
休憩 25分
第2幕 16:15 -16:55