ABTロミオとジュリエット』2011年7月26日 ケント&ゴメス

ABTのR&Jは初見。ロイヤル版と比べると主役陣の演技が誇張されている部分があり、ちょっと大衆演劇的?な印象。コール・ドが踊りも演技もイマイチだったのはやや不満。でも、主役、特にゴメスが超素晴らしかったし、ケントとのパートナーシップも良かったので大変満足。

<第一幕>
幕が空いてちょっとほっと?したのは、セットや衣裳の雰囲気がロイヤルとよく似ていたから(←新国立(というかBRB?)のトラウマ)。後で確認したら同じニコラス・ジョージディアスだった。

シムキンのかわいらしいヴェンヴォーリオにちょっとおっさん臭い?マキューシオ。そして、ロミオ・・・ うわー、これロミオ?マキューシオとヴェンヴォーリオより頭ひとつでかくてたくましい・・・そして黒髪オールバック・・・白タイツが似合わない!!!なゴメス・ロミオに違和感を感じまくり。さらに、街の人々の踊りや演技がなんだか薄ーい・・・ここってもっとエネルギッシュじゃなかったっけ? 唯一娼婦と踊るシムキンのひときわ高くあがる脚が目に付いた。スウォード・ファイトもちょっと緩慢な印象。ヴェローナ大公も貫禄不足。第一場は???のうちに終了。

ジュリエットの登場。もう随分シニアなケントだけど、かわいらしいジュリエット。すごいなー。パリスはハムーディ君♪ 背の高いケントに負けない長身にスラリとした脚に白タイツが似合う〜

舞踏会前の3人の踊り。シムキンの踊りは抜群にしなやかできれいなんだけど、引っ張りすぎるあまり音に遅れるのが全幕の脇役だと気になる。マキューシオはちょっと重い?ゴメスのソロ。ちょっと苦しい部分もありながら・・・ どうしてもスティーヴンのきれいなステップが目に浮かんでしまう。

舞踏会のダンス。やはり新国立の男性陣と比べると迫力がある〜!ここから、ようやく私のテンションが上がり始めた。ジュリエットとロミオの初めてのPDDになると、もうすっかりゴメス・ロミオに夢中に。なんてやさしく力強いサポート。

バルコニーのシーンはそれはそれは美しく愛にあふれていた。ゴメスのソロが素っ晴らしかった。あんなに大きいのに、ジャンプは高く着地は軽やか。回転も速く・・・そして、PDDでは本当にしっかりとしたサポート。回転しながら背から飛び込んできたジュリエットしっかり受け止め、力強く高くリフト・・・そして、最後のキス・・・初めてのキスを交わした後微笑みながらしばし見詰め合う・・・これが最高だった。このバルコニー・シーンはこれまででベストかも。

<第二幕>
ここはマキューシオの独壇場だった。配役表を見ていて、あれ?と思ったいたのだが、ABT版ではどうもマンドリンのリードはマキューシオが踊るものらしい。ここまでも、クレイグ・サルステインの踊りは重く感じられて、なんでこの人がマキューシオなのだろう?と思っていたのだが、マンドリンを踊り始めてもその思いは変わらず。馬とび3連発では、脚がよろけてきて、飛べるの??と思ったら、3つ目はお茶目にパス!これは演出?これで、彼は観客の心をつかんだように思う。そして、最後の死の演技はすごかった。マクミラン版は割りとあっさりとしているのだけど、たっぷりと魅せてくれた。後で気がついたが、この人はスペシャル・ドンキで私のツボに入ったガマーシュだったのだ。演技達者! 

最後のキャピュレット卿夫人の嘆きは今ひとつ迫力不足だったのが残念だった。

<第三幕>
最初にロミオが起き上がって、マントを身に着けた後、もう一度ベッドへ行って眠っているジュリエットにキス・・・これ良い!!ロミオにはやはりキスしてから立ち去って欲しい。

さて、この後のジュリエットの演技は興味深いものがあった。ABT版だからなのかケントがそうなのか。ロレンス神父のところへ行く前。追い詰められたジュリエットが一人ベッドに座って自分の道を考えるシーン。ここはほとんど動かず、表情のわずかな変化だけで見せるシーンだと思っていたが、ケントは体をふるわせて大きく泣き、最後にふと思いつくといった感じで駆け出した。ふむ。

ロレンス神父のところから戻ってきて、すぐにロミオが去っていった窓辺で薬を飲もうとするが、人気がしたので、薬を枕に隠す・・・ 人払いした後の薬を飲むまでの逡巡・葛藤を大きく表現。

もっとも違うのは最後の事切れるシーン。ロミオが仰向けではなく、棺に向かってうつぶせ気味に死んだな〜と思ったら、瀕死でベッドの上を這ってきたジュリエットが最後にそれをグイと起こして、キスして事切れる・・・ ん〜、派手な演出・・・。先の決意のシーンもこのエンディングも好みじゃないなぁ。マクミランの振り付けには過剰な装飾に感じた。アメリカン・テイストなのだろうか?

書き忘れたがケントとゴメスのPDDは3幕の最初も最後も本当に素晴らしかった。あれだけゴメスがしkっかりサポートしている風に見えて、ケントも結構ハードに応えていたのだな・・・とわかったのが、最後のシーンでは膝に血がにじんでいたから。迫真の死体演技だったのでした。

カーテン・コール。しっかり身を寄せ合う二人に厚い信頼感。よく踊りこんだペアでR&Jを観たのは初めてかも。パートナーシップを堪能させていただきました。

次回は木曜日。3回見たかったけど、平日3連荘は無理ですよ。JAさん。

アメリカン・バレエ・シアターロミオとジュリエット
2011年7月26日(火) 6:30p.m〜9:30p.m.


振付 : ケネス・マクミラン
音楽 : セルゲイ・プロコフィエフ
原作 : ウィリアム・シェイクスピア
台本 : セルゲイ・プロコフィエフ/セルゲイ・ラドロフ
装置・衣裳 : ニコラス・ジョージアディス
照明 : トマス・スケルト
指揮 : オームズビー・ウイルキンズ
管弦楽東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


ロミオ : マルセロ・ゴメス
ジュリエット : ジュリー・ケント


マキューシオ(ロミオの友人) : クレイグ・サルステイン
ティボルト(キャピュレット卿夫人の甥) : ゲンナディ・サヴェリエフ
ヴェンヴォーリオ(ロミオの友人) : ダニール・シムキン
パリス(ジュリエットの婚約者) : アレクサンドル・ハムーディ
キャピュレット卿夫人 : ステラ・アブレラ
キャピュレット卿 : ヴィクター・バービー
ヴェローナの大公 : クリントン・ラケット
ロザライン ルシアナ・パリス
ジュリエットの乳母 : スーザン・ジョーンズ
ローレンス神父 クリントン・ラケット
モンタギュー卿夫人 : サラ・スミス
モンタギュー卿 : ロマン・ズービン
3人の娼婦 : ミスティ・コプランド、シモーン・メスマー、クリスティー・ブーン
ロザラインの友人 : カレン・アップホフ
ジュリエットの友人 : ジェマ・ボンド、カロリーヌ・デュープロー、レナータ・パヴァム、クリスティーシェフチェンコ、ジェニファー・ウェイレン、キャサリン・ウィリアムズ
マンドリンの踊り : クレイグ・サルステイン、グラント・デロング、ケネス・イースター、ブレイン・ホーヴェン、アロン・スコット、アイザック・スタッパス